レピータを作ろう

 D-STARの仕様のリグが現在ICOM社から発売されている。これらのリグだけではD-STARの本来の目的である広域の交信(複数 のレピータを繋いだ交信)ができない。現在の所、このためのレピータがICOM社一社から 発売 されているだけである。ただし、海外では、ノードアダプターを使用して、G2互換のレピータが製作されています。例えば、(RSGB(英国アマチュア無線連盟の機関紙)の記事)などがあります。

 本ページでは、レピータの自作可能性について探って見ることにする。

 通常のアナログ無線機の9600bpsのパケット端子を使用してDVモードの信号を送受信できる汎用インターフェース (DVデジピータ・インターフェース)の制作方法を「 CMX589Aを使用してノードアダプターを作る(DVデジピータ・インターフェース)」に書いておきましたので興味ある方は見てください。この汎用インターフェースは、DVモードで使用されている デジタル信号をそのまま(音声に戻していません)送受信するものです。無線部ヘッダーの情報の読み取り、 書き換えがPCから可能です。このインターフェースを利用すれば、山掛けレピータ、ゲートウエイ機能を 持ったレピータ、アクセスポイント、ノードアダプター等を作ることができます。なおレピータ局は、 日本の免許制度では、JARLしか開局することができませんので、開局する場合はJARLに問い合わせてください。
 9600bpsのパケット端子を使用する場合、帯域幅がD-STARの本来の帯域を超えるとするコメントをされているメーカーや局がおられますが、 0.5BTの4800bpsのGMSKをFM変調する場合、帯域幅は、4800bpsのGMSKの帯域幅とFM変調回路に加えている振幅に依存します。 FM変調回路に加えるGMSKの振幅や帯域は、喋る音声の大きさや音声に含まれている周波数には無関係で一定ですので、この振幅を 制限できれば、D-STARのスペックの周波数帯域を満たすことができます。9600bpsの端子を使用したから、周波数帯域が広がるとい うものではありません。また、受信に関しては、隣接周波数の混信を気にしないのであれば、通常の20KHzもしくは10KHzセパレーションの フィルターで問題はありません。

D-STARの仕様について

 D-STARの仕様は、 JARLから公表されているが、レピータを自作するために必要なアシスト局とのデータ転送、インター ネット経由のゲートウエイ機能の仕様が公開されていないため、現時点では完全に互換のある レピータを製作することはできないが、現在各地に設置されているアナログレピータと同様な単独 レピータ(山掛けレピータ)を製作することは可能である。
D-STARでのDVモードでのパケットの構造は、左記のようになっている。この内、 無線部ヘッダーは、誤り訂正が可能なようにするため、畳み込み符号化やインターリーブの手法 が使用されている。データ部は、音声とデータ(簡易データ転送のデータ)を交互に転送する。 詳細は、上記 仕様書を参照 して下さい。
D-STARでのDDモードでのパケットの構造は、左記のようになっている。この内、 無線部ヘッダーは、DVモードと同様に、畳み込み符号化やインターリーブの手法が使用されてい る。データ部分は、TCP/IPのパケットをそのまま転送する。
山掛けレピータ
レピータ間を中継しない山掛けの場合、(DV、DDモード共)受信したパケットをそのまま転送すれば D-STARの仕様を満足したレピータとして機能します。(正確には、RFヘッダーのフラッグのビットを リセットする必要があるのですが、山掛けモードであれば、リセットしなくても問題はありません。)

DVモードについて

 ディジタル音声モードであるDVモードにだけに特化した山掛けレピータは、比較的簡単に 製作することができます。中継するパケットは、アップリンクとダウンリンクは、同じもので 変更しなくても問題はありません。(正確には、RFヘッダーのフラッグのビットを リセットする必要があるのですが、山掛けモードであれば、リセットしなくても問題はありません。) このためDVモードをサポートしたリグ2台あれば、今までのアナログレピータのトーンシグナルを検出 してPTTを制御する代わりに、DVモードのパケットの無線部ヘッダーの情報の「送り元中継局」コール サイン(上記図を参照)が、自分自身(レピータ)のコールサインであれば、送信モードに切り替え、 また、無線部ヘッダーを加工せず、送信すればレピータが実現できます。

  • 直接デジタル信号を処理する場合

  •  アップリンク側のリグからGMSKが復調されたデジタル信号が取り出せ、かつ無線部のヘッ ダー情報が解読でき(「送り元中継局」の情報だけ)れば、このデジタル信号をダウンリン ク側のリグのGMSKの変調回路に入れれば、実現できます。ただし、「送り元中継局」のコール サインの検出に必要な時間だけ遅延する(注1参照)必要があります。この遅延が正常に行える 場合は、音声簡易データ転送共、正常に転送可能です。
     ただし無線部のヘッダーを見ていただいても分かるように、バイト(8ビット)単位の処 理になっていません。つまり、ビット単位で処理する必要があるため、通常のシリアルイン ターフェースは使用できません。

  • 無線部ヘッダー生成・復号プログラム

  • 無線部ヘッダーを生成するプログラムのサンプル(Cプログラムです)を作成しました。CRCの生成、 畳み込み処理、インターリーブ処理、スクランブル処理から成り立っています。また受信した信号は、 この逆の処理を行うのですが、畳み込み信号の復号は特殊な処理が必要です。この例としてViterbiによる方法の例も作成してみました。

  • アナログ信号で処理する場合
  •  GMSKの復調信号が取り出せない場合は、アップリンク側のリグの音声出力をダウンリンク 側のリグのマイク端子に入れることによっても可能です。ただし、本来であれば不必要なD/A、 A/D回路を余分に通ることによる音質の劣化は避けられません。この方法では、「送り元中継局」 のコールサイン(上記図を参照)の検出、そしてダウンリンク側の無線部ヘッダー情報を設定 する処理が必要です。最近のモービル機は、フロントパネルが分離できる構造のものが多いこ とから、この延長ケーブルの端子を利用して、検出、設定ができるものもあります。ただし、 このダウンリンク側の無線部設定処理に必要な時間だけ、音声を遅延させる必要があります。 音声だけであれば、PTTを押した直後数百ミリ秒音声が切れる(注1参照)ことを気にしな いのであれば、この遅延処理を省略できます。(注2参照)


    1.無線部ヘッダーは660ビットで構成されています。ただし畳み込み符号化がされています ので実際の情報はこの半数の41バイト(328ビット+畳み込みの復調の為のゼロ2ビット)です。 また転送速度は4800bpsですので、無線部ヘッダー情報を全て受信するには0.1375秒かかりま す。この後、畳み込み 符号化、インターリーブされたこのビット列を復調することになり、これらの処理に時間 が必要になります。これらの処理時間は、使用するCPUの処理速度に依存しますが、通常 数十ミリ秒程度必要で、この分遅れることになります。 デジタル信号を直接処理し、遅延時間を固定する方法を採用すればシフトレジスター もしくはFIFOメモリーでこの回路を実現できます。
    2.D-STARのDVの仕様を満足しようとすれば、必然的にGMSK回路とこの回路にデータを 送り込む回路が必要です。このGMSK回路へのデータ入出力回路の入 り口を見つけられれば、デジタルデータをそのまま処理することができます。



     

    DDモードについて

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    各種資料

  • デジタル信号処理
  • 各種関数
  • ID-800内部
  • IC-U1内部(UT-118を含む)


  • RP2のサービスマニュアル(レピータの回路が分かります)
  • RP2レピータのソフトの設定マニュアル
  • RP2の設置マニュアル

  • 2008年08月09日更新
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